テレビ放送における誤訳

二年前の米大統領選挙の際に、テレビ放送で “Love Trumps Hate” というフレーズが字幕で誤訳されて話題になりましたが、話題にならない誤訳も日本のテレビではよく見られます。

ここでは僕が今まで見てきた中で覚えている例をいくつか紹介します。

 

・ “hit close to home”
状況:アメリカである事件が起き、ニュース番組で地元の人をインタビューしているシーン。インタビューを受けているアメリカ人が感想を聞かれ、英語での答えに対し字幕が流れる。

英語(音声): “… so it hit close to home.”

字幕:「私の近所でも事件が起きたことがあります」

正しい訳:「私にとって他人事ではありません」

⇒ これは比喩的な表現を文字通りに訳してしまったため起きた誤訳です。

 

・“kick away”

状況:ニュース番組でのその日のメジャーリーグのハイライト。打球がキャッチャーの前で落ち、転がっていくシーン。映像とともに英語の実況が流れる。

英語(音声): “… and the ball kicks away!”

字幕:「キャッチャーがボールを蹴飛ばそうとしています!」

正しい訳:「ボールが転がっていきます!」

確かにこれは辞書などには載っていない、ネイティブしか知らない表現かもしれませんが、プロの翻訳者なら知っていないと困ります。

 

・“Irish”

状況:某スポーツ番組。

英語(音声): “… Irish…”

字幕:「オレンジ色の」

正しい訳:アイルランドの」

これは単語を完全に聞き違えていましたね。正しく聞き取れなければもちろん誤訳になるので、放送翻訳ではリスニングスキルも大切です。

 

これらはほんの一握りの例で、テレビを観ていると誤訳は頻繁に起きています

 

僕はまだミスがあっても分かりますが、ミスに気付かない視聴者の方々もたくさんいるでしょうし(英語以外の言語でしたら僕も含めて)、その人たちにとってはテレビから伝わる情報や受ける印象、ひいては海外の物事に対する考えなどが翻訳の品質に左右されてしまう可能性があります。

 

例えば上記の野球のシーンでは、字幕を信じれば「なんだこのダメ捕手は?サッカー選手かよw」みたいなリアクションになってしまうかもしれません。

(もちろん視聴者は誤訳をある程度想定しているかもしれませんし、鵜呑みするとは限りませんが。)

これは比較的無害な例と言えますが、もし政治や科学などのニュースで誤訳があったら重大な影響を及ぼすかもしれませんよね。

 

このように、「言語の架け橋」(翻訳者)であるということは、ある意味「情報の門番」のような重要な役割を持つことと言えるでしょう。

情報が正確に伝わるように、放送翻訳の精度の改善が望まれるところです。